暖かさは、桜の花が散ってから…

ある寒き日の林道ツーリングの話。

この記事は、2012年11月以前のY'S GEAR CLUBの記事です。

「暖かさは、桜の花が散ってから…:写真

「地球に遊ぶ」 COLUMN9第1回

暖かさは、桜の花が散ってから…
ある寒き日の林道ツーリングの話。

バイクに乗り始めてから半世紀、何とも恥ずかしい話だが、 先日、今年に入って初めてのツーリング(林道)に行って来た。
暖かな東京都心部では桜の花が満開に咲く四月の初旬。冷たい冬の風とは違い、どこかに甘さの漂う春の風である。向かうは自宅(小平市)から西北方向に二時間余りの名栗川・秩父周辺のお山。

普通ならば事前の点検というのが健全なるライダーの常識というものなのだろうが、なんと当日の朝になってから触るのが数ヶ月振りとなるセロー225君(2001年型)をガレージから引っ張り出しての旅立ち。果たして、エンジンはかかってくれるのかどうか? 冷や冷や気分のセル回し……シュルシュルシュル・ウイウイウイ(と、かなりヤバイ感じの10秒間)、そして一瞬の間を置き、再びグルグルグル・ウイウイウイウイ・・パタパタパタ!(やった)と、どうにかエンジンは回り始めてくれたので・し・た(ホッ)。

清々しい朝の新青梅(街道)。日曜日のまだ午前8時ということもあって交通量も少なく、道路はス~イスイ。やがて「中古車」「中古バイク」店の看板の立ち並ぶ「東大和」付近を通過。お店のガレージ内にひっそりと佇むバイクが、いかにも寂しく、「早く誰かに買ってもらいな~、誰か僕もどこかに連れて行って欲しいな~!」と言っているようだった。

青梅市内からは県道28号線へ左折して田舎道に入る。その手前の信号で出会った「つくば」ナンバーのヤマハ・スーパーテネレ(650cc)君と、その相棒らしき前のBMW(DAKAR・1995年?)君。隣り合わせに並んで止まったこんな時、互いに見ない振りして、とても気になる"隣のバイク"。ふと、気がつけば…この前後二台の駆動系=ヤマハのスーパー・テネレがシャフトドライブなのに対して、BMWの本家本元の方がチェーン駆動なのだ?…これじゃまるで逆さまじゃねーか!と、可笑しかった。
と、やがて前方の信号が「赤」から「青」に変わる。すると、隣のスーパーテネレ君、焦ったのか?発進に失敗してエンジンストール。Oh My God!何とも気の毒だけど、お先に失礼しま~す。
それにしても、このシーズン(春)のツーリングは毎年の事ながら、思いのほか寒くて随分と往生をする。去年もほぼ同じ時期だったが、あまりの寒さに耐えきれず、秩父市の沿道で発見した「しまむら」で1980円のフリースを買って着込んだ思い出がある。たかが"寒さ"だが、「暖かい」と「寒い」ではその日のツーリングの楽しさを左右する大きな要素だから、装備はしっかりと十二分に備えたいもの。本当の春の暖かさがやって来るのは、やっぱり桜の花が散ってから(と、毎年思いながらも、ついなめてかかり寒い思いをする)だ。

写真

(左)僕のヘルメットです。まさに今、陽が昇る寸前の地平線を表しているデザインです。(中)お昼に立ち寄った秩父の食堂(悦楽園)では、こんな大盛り(百円増)のメニューがいっぱいです。(右)三ヶ月振りに乗った僕の愛車セロー225と、名栗湖周辺の観光案内板。

道は田園風景の広がる県道53号線。ここはまだ「桜」ではなく「梅」の赤い花びらが今や盛りと咲き誇っていた。県道からヒョイと左に折れて名栗川を渡ったところの「さわらびの湯」で仲間達と合流する。
「えっ、なんだこの数は?」___ この春一番の仲間達との合同ツーリングとあって、集まったライダーの数は31台。この数で林道へ? いくらなんでも多すぎる台数だ。ならば最低でも5~6台ずつ、5隊くらいに分かれ時間をおいて林道に進入するしかない。その理由は、普通のアスファルト道路と違い、山中の林道には様々の目的を持った人達が道を利用する。自然散策や登山、絵や写真を目的に歩く人、山菜採りや茸採り等々、このような人達と山中で出会った場合、僕は普段の下界にいる時よりも、さらに何倍もの笑顔で挨拶をし、こちらが善良なる市民であることをアピールする。要するに"ぶりっこ"して安心させてあげるのである(自分がそう思われたいのではなく、恐いと思っている先方の恐怖心をそうすることで取り除いてあげる)。自然は誰にとっても素晴らしく、大切なものだから、お互い様の気持ちが大事。

写真

(左)31人中、紅一点の木田さん(静岡市)は林道経験三年目。林道の何処が良いの?と聞くと「ONは上手な人や大きなバイクの人が威張っているが、OFFは上手なひとほど優しく初心者をリカバーしてくれるから好きです」と言っていました。(右)林道を下界におりていく途中に出会ったカモシカの子ども。カメラを向けても逃げなかった。

〈林道の楽しさは=自然の魅力〉
林道の楽しさも同様、僕の場合は、人に「バイクの魅力とは何か?」と問われたら、迷わずそれは「自然の魅力だ」と答えている。それは=無限なる地球の神秘や営み、荒々しさや美しさ、四季、そこに暮らす人々の心や顔、動物、そして植物など、総てのモノとの出会いと感動が,言い換えるとバイクの魅力です。林道もたまにはいいですよ。というわけで、とても楽しい林道ツーリングでした。

写真

地球上には、こんな夢のように美しい所(シベリア)がいっぱいある。

冒険家 風間深志:写真

プロフィール 数々の冒険の傍ら、バイクツーリングクラブ「MAC」のリーダーや、椎名誠氏率いる「いやはや隊」メンバーとして、さらにフィッシングクラブ「FAC」の会長、全国各地での講演や「地球元気村」の開催など、多方面で活動。2008年 WHO承認活動「運動器の10年」世界運動国際親善大使に就任。
*NPO法人「地球元気村」代表
http://www.chikyu-genkimura.com/