電動リールを使用して、カジキ釣りにチャレンジ!ついにブルーマーリンを釣ることができるのか。
ラクわくフィッシング
ボートライフトップチームワイズギア 電動リールでマーリンを釣る!
2017年7月。東満沖の黒濯は蛇行が比較的大きな規模を録ったまま東に移動し、八丈島の南を流れるという予想が発表されていた。
ヤマハマリーナ浜名湖でも6月から多くのトローリングボートが違州灘に繰り出しては辛酸を嘗めていた。
浜松ビルフィッシュトーナメントを1週間後に控え、チームワイズギアのメンバーはFR-32シーラボとYFR-24シーラボジュニアの2艇に分乗してプラクティストローリングを行うことにした。
マリーナ集合はAM5:30。夏のこの時間はすっかり日が昇り、浜名湖面は鏡のように静かだった。
ワイズギアが日頃、アクセサリー類の実験や検証用に使用しているFR-32シーラボ(海の実験室)と、YFR-24シーラボジュニアはそれぞれ2台の電動リールをセットして、AM6:00、マリーナを出発した。
浜名湖口の今切を出て、2艇は通称“鮫掘”と呼ばれるV字型に切れ込んだ海底渓谷のようなポイントヘと向かった。
今切を出た2艇は真っ直ぐ南下し、8マイル先の鮫掘を目指した。7時を回った辺りから空が怪しくなってきた。まるで蛇腹のような雲が南からじわりじわりと北上してボートの上を覆い被さり始めた。2艇はそれぞれの判断でエリアを決めてトローリングを続けた。
シーラボは雨雲を避けつつ鮫掘の南端を探り続けていた。ここまでシイラのアタックさえなく、無為に時間を過ごしていたクルーは諦めに近い感情が芽生え始めたその時だった。
「カジキだ!」
黒い巨影が船体の横を掠めたかと思った途端、電動リールのドラグが悲鳴を上げた。ラインが瞬く間に海面へと引き摺り込まれてゆく。
呆然とそれを見つめていたクルー達だが、たまたまロッドの前のクーラーボックスに座っていたクルーが我に返って巻き上げ用のポタンをプッシュした。それでもリールからはラインが出続けていく。
リールには900mものラインが巻かれているとはいえ、いったいどこまで出続けるのだろう。キャプテンだけはラインの出てゆく方向を冷静に見極めながら、舵とスロットルを操っていた。
カウンターの数字が500mを過ぎた辺りでようやくラインの出が渋くなると、今度は電動リールの逆襲が始まった。ロッドは前方に大きくしなったままだが着実にラインを巻き取り始めた。マーリンも必死で抗うのか、ドラグが出て行ったり、巻取りが滞る瞬間もある。しかし電動リールは力強く、且つ忍耐強く着実にラインを巻き取ってゆく。その様子を拳だけを力いっばい握りしめていたクルーの一人がつぶやいた。
「これ、自力で巻いてたら、とうにギブアップしてるよな」
デッキで固唾を呑んで見守る全員が無言で頷く。
ファイトが始まって40分が過ぎた。リールの巻き上げスピードがゆっくりになり、そして停まった。
ロッドの近くに陣取ったクルーが手動ハンドルを巻き上げるとゆらりとマーリンの巨体が海面に浮かび上がった。
スタッフの緊張が一気に高まった。
しかしカジキは500m余も引き摺り回されたために、最後の抵抗をする余力さえ吸い取られてしまったようで、リーダーマンが導くままに素直に船べりへと寄ってきた。
AM10:09 ついにブルーマーリンは121.4キロの巨体をシーラボのデッキ上に横たえたのだった。