春風を切り裂き「野生の力」を磨く!そして、待望の冒険の旅へ。

春になると、自然と身体中にやる気が漲って、無性に何処かに出かけたくなる。

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KAZAMA SHINJI COLUMN 「地球に遊ぶ」

Vol.57

春風を切り裂き「野生の力」を磨く!そして、待望の冒険の旅へ。

CATEGORY:地球に遊ぶ

今。外は「春」である。

これまで山々を覆っていた雪も溶け、木々には淡い緑が芽吹き、待望の風温む「春」の季節がやって来た。黄色の菜の花、ピンクの花びらが満開の桜全線も、もうそこまでやって来た。

▲春の風景である山々の桜の満開ももうすぐそこだ。
▲春、桜を描く人。

さて、こういう時期になると、自然と身体中にやる気が漲って、無性に何処かに出かけたくなる。冬の厳しい寒気に押され、縮こまっていた気分が、なんだか肩の力も抜けて「なめんじゃねぇ!」と、急に強気になったり(笑)、一気に攻勢に転じたくなるこの季節。押さえきれないほどのムラムラ感、沸き上がるような前向き感は、一体身体のどこから出てくるのだろうか?その答えは、大自然の春の息吹に反応する「生命の叫び」、もしくは「野生の力」とでも云うべきものが、その正体だと僕は思っている。

その季節の誘いに乗って、いかにより多くの自然と対話を行うか?が、言い換えると、僕たちの一番大切にしている「バイクの時間」ということになりそうだが、そんな時間と行程の中、僕たちはバイクと共に多くの得難い体験と感動に幾度となく触れながら、どんどんとバイクの「虜」になっていく。

僕が信じているのは「バイクの魅力」=「自然の魅力」ということ。自然の中での体験にこそ、「野生の力」は知らず知らずのうちに磨かれ、身に着いていく。

「野生の力」。それは自然界に活きる人間にとって、野生に生きる動物たちと同様、とてつもなく大切な総合力のこと。つまり人で言うと人間力。書物やバーチャルの世界では決して培われない、自然界の経験値のみに育まれる神秘の力。

例えば、僕が北極点遠征の際(マイナス54℃)、北極海の海上に乱立する乱氷帯の中で、どちらに進めば安全で、どちらに向かうと危険か?を、選択しながら進路をとったその基準値は、僕という人間が、幼少の頃より経験した様々な風景や体験の中から身につけた「美」を基にした「五感」による判断だった。平たく言えば、どちらとも判断のつかない選択肢では、どっちが美しくて好ましいもので、どっちが何となく嫌な気がするか?という咄嗟の判断である。その直感こそが、フィールドで身に着ける「野生の力」、そのものなのだ。

▲延々と続いた北極海の乱氷帯の中では「野生の力」がものを言った。

更にもうひとつ。1982年に僕が日本人として初出場を果たしたパリ・ダカールラリーの11日目。突如として砂嵐に見舞われたサハラの核心部は、方向を見失った出場マシンが、あちこちへと彷徨いはじめ、ぐるぐると迷走。この時、ラリーに出場していた英国のサッチャー首相の息子は、一週間もの間、行方不明となり世界中が大騒ぎとなった。

そんな中、ラリーストにとってはバイブルに等しい「小間図」を、訳あって(仏語が読めない)当初から持って行かなかった僕は、毎日を太陽と砂煙と、先行車のタイヤの足跡から割り出す僕だけの特殊?走法でやり過ごしていたのだったが、迷走する多くの選手たちを尻目に、僕は実にすんなりと難なくキャンプ地にゴールしたものだった。

その秘密は言うに及ばず、何も頼りにせず、毎日のレースを自分の嗅覚と大脳のジャイロを頼りに走った「野生の力」にあった事は言うまでもない。

と、まあ、そんな具合に、今年の春の走りのはじめに「自然」を大いに見つめ直し、体験し、ライダーには不可欠とも云える「野生の力」を身に着け、今年こそは長年の夢であった「冒険の旅」に出かけていって欲しいものである。

そこでひとつ。この春のツーリングが何倍も楽しくなる、僕からのお薦めツーリング・アイテムを紹介したい。

それは、旅の途中、景色や展望の良い所を見つけたら、是非ともやって欲しい「野点」の三点セット(モンベル製・¥7,800)。バイクや登山の携行品として開発され、落としても割れないプラスチック製で、超軽量コンパクト。背中のザックやタンクバッグの中に入れて持って行けば、ひと休みの時間が何倍も豊かなものとなる。必要とされる水分やエネルギーの補給(花菓子もちゃんと食べて)を行いながら、ゆとりある旅を演出する優れモノだ。今年の春の旅にいかがかな?

▲僕のお薦めアイテムはお茶の楽しみ方だ「モンベル製・野点三点セット」
▲このように抹茶はお菓子と共に頂くのが正しい。

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