「世界一周」編 vol.3

世界一周、66,300kmの世界運動の旅、PASでルンドにゴールイン!

この記事は、2012年11月以前のY'S GEAR CLUBの記事です。

世界一周、66,300kmの世界運動の旅が終わった。
その内の6,169kmを走ったPASでルンドにゴールイン!

やれやれ、ようやく帰って参りました……。今回は足かけ5ヶ月の旅でした。長かったと言えば長いと言えますが、終わってしまえば、あっという間の出来事です。帰国して、しみじみと「助かった?」と思ったことは、留守中日本を襲ったあの夏日の「猛暑」を知らずに済んだこと!一体それが、どれくらいのものだったのか?は、想像の域ですが、聞くと皆、口々に「あれは耐え切れない暑さだった…」と、ぐったりとした顔をします。
そんな頃、北米からカナダ、そして北欧を旅していた僕は連日、涼し~い毎日。たとえば、東京が8月の最高気温を記録した5日(38・6℃)は、あちらはたったの24℃、気分のいい一日でした。その日の日記を読むと…「今日は、この旅始まって以来の気持ちのいい追い風。ケベック・シティーを出て200km、周囲の風景にメキシコ湾を出て以来、とんと見なかった“山”が見えてきた。そして、樹木の種類も針葉樹や白樺へ。そんな中を、追い風に乗って快適に走るテツと僕。「♪白樺~、青空、南風~」と、思わず喉を突いて出てきた何処かで聞いたことのある歌。南からの涼しい風に押され、身も心も“青空”のように晴れ渡る爽快な一日」だった。

(左)フィヨルドの入り組んだ地形のノルウェーは、内陸に100kmも入った所でも、この通りの海?を見ながら走る。(右)最終ステージのスカンジナビア半島縦断のスタート地点、ノルウェー・ベルゲンの港で海軍の兵隊さんに見送られた。

そのような涼しい思いをしつつ、2007年からマジェスティに乗って始まった「運動器の10年・世界キャンペーン」(WHOの承認=健康寿命の増進と、それを支える外傷医療の向上を狙う活動)の世界一周の旅も9月9日、同運動の世界大会の行われたスエーデンのルンド市(人口10万人)の会場に無事ゴールを果たして、世界五大陸66,300km、日数にして350日の旅をようやく括る事が出来た(ホッ)。

(左)北欧の家々は門の入り口から、このような自転車の飾りなどを配したりして、綺麗な気配りが成されていた。(右)標高が1,000mを越える所もアシスト機能のお陰で、障害者の我々でも難なく走ることが出来た。

思えば…「果たして、僕の足は再び歩けるようになるのだろうか?」と、2004年の事故(第26回大会のパリ・ダカで負傷)以来、通算13ヶ月に及ぶ病院での闘病生活の中で、毎日そのことばかりを考えていた自分。そして、闘病中に知った「日本には先進欧米諸国のどこの国にもある、怪我をしたら先ずは運び込まれる外傷治療の専門病院が一つもない!」と言う外傷医療後進国日本の実態。結果として、フランスでは順調に運んでいた自分の足の治療は、日本ではまったく思うようにはならなかった悲しい結果へと繋がるのですが、全ては後の祭りです。
今は、足で走る事は出来ない自分になってしまいましたが、バイクでなら、まだ走ることは出来ます。―――あれからもう4年。足の具合は依然と同じような状態だが、ユーラシアの横断18,000km(マジェ)から始まったキャンペーンは、次のアフリカ縦断21,000km(SUVとトラック)に繋がり、その次のオーストラリア横断5,150km(障害者三人とアシスト自転車)、さらには日本縦断2,300km(127人の障害者と共にアシスト自転車、車椅子、手こぎ自転車で)、そして、今回の南北アメリカとスカンジナビアの縦断19,850km(マジェ&アシスト自転車)へと続き、地球を一周。全通過国は31カ国です。

世界各国の様々の医療事情に触れながら、沢山の医師や患者さん達と出会い、医療と健康の大切さを改めて痛感しながら、身体機能の健全は極めて大切な事ですが、機能の一部を失ってしまった沢山の仲間たちと出会って思った事は「健康」とは必ずしも身体だけではなく「心」にも多くのウエイトがあり、健常者とは=心の元気な人をそう呼ぶのだ!と世界一周を終えて思ったのでした。

(左)スエーデンの片田舎の昼下がりの駅ホーム。二人で座り込んで、長閑なムードだった。(右)良い天気と青空の中、ゴールを直前にして頑張る。

そして、旅のおしまいは今回、考えもしなかった「インターナショナル・アワード・フォー・スペシャル・チーブメント」(特別功労賞)の世界委員会からの授賞。この運動の最初の“言い出しっぺ”であるリドグレン博士から「よくやったね!」と、褒めて貰ったことが、何よりも嬉しい思い出となりました(一人の患者としてケジメもついた)。

四年間の最終ゴール地点となったスエーデン・ルンドのスカンジナ・スターホテルにて、喜びの瞬間。やったー!

プロフィール 数々の冒険の傍ら、バイクツーリングクラブ「MAC」のリーダーや、椎名誠氏率いる「いやはや隊」メンバーとして、さらにフィッシングクラブ「FAC」の会長、全国各地での講演や「地球元気村」の開催など、多方面で活動。2008年 WHO承認活動「運動器の10年」世界運動国際親善大使に就任。
*NPO法人「地球元気村」代表
http://www.chikyu-genkimura.com/