南半球に不思議発見

秋こそアグレッシブに「冒険」の旅に出る!

この記事は、2012年11月以前のY'S GEAR CLUBの記事です。

「南半球に不思議発見。:写真

「地球に遊ぶ」 COLUMN7第1回

南半球に不思議発見
バイクで宇宙に連なる感動の旅を…。

秋のツーリングと言えば、そりゃなんたって温泉!・・・なんて柔なことはここでは言わない。私流に言えば、秋こそはアグレッシブな「冒険」の季節! これまで、いつもそう思って気合いたっぷりの旅に出かけてきたものだ。南極、南米、アフリカ、オーストラリアの大陸をはじめ、NZなどなど。旅するステージは世界中に一杯だ。日本のこれから迎える季節が「冬」ならば、南半球は今、暖か~い「夏」である。
世の中、自分のいる所だけが全てだと思ったら大間違い、一日二十四時間、世界には様々な時間に暮らす人々がいる。起きている人、寝ている人。人生も暮らしもいろいろだ。泣き、笑い、怒鳴り、唱う、様々な顔。そして、様々な自然がある。
「南」で面白かったのは、以前にアフリカ大陸の縦断中に「赤道」を通過した時のこと。
"Equator"・・・所はケニアの「ナニュキ」という村のど真ん中を貫く国道上だった。走りゆくと前方に大きな「赤道」を示す文字の入った黄色い看板が見えてきた。普通、このような観光スポットには必ずと言っていいほど大勢の人々がいて、土産物やら両替やら様々な謳い文句を武器に観光客に襲いかかるものなのだが、不思議にもこの時は人っ子一人として見あたらない(偶然?)。代わりに、看板の脚下にはポツンと一つ、黄色のバケツと緑の漏斗(じょうご)が重ね置かれていた。バケツの中には八分目程の水が入っていて、浮いている漏斗の水面には長さ5cm程のマッチ棒が二本浮かんでいたのだった。と、ここまで言えば、それがもう何を意味するか?は、誰にでも察しは付くというもの。
案の定、そうこうしている内に、バケツの持ち主らしいお兄さんがひょっこりと現れた。「試してみるかい、一人50シリングだよ!」(1Ksh=1.20円)と、さっそくのお誘いだ。
これまで、理屈(コリオリの力)では知ってはいたものの実際に試したことはない。疑心暗鬼の気分で、先ずはお馴染みの「北半球」側から。赤道の看板から5m程北側の所に行って、さっそく漏斗(バケツの水面と同じ水が入っている)を上に持ち上げてみた。すると、水は左に渦を巻きながら下のバケツに落ちていった。
で、今度は反対側に赤道から南にまわって(3m程)同じことをやってみた。果たして漏斗の中に浮かぶマッチはどっちに回るか!
うっ、何と左。一体これはどうしたことだろう?と思いつつ、今度は看板から10mと大きく離れ再挑戦してみた。
ジャジャーン! マッチ棒は今度は見事に右に回って渦を巻いたのだった。凄い!始めて見る感動。右と左、たったの10mの間に何があるというのだろう?単純なことなのだが、心にズッシリと重い衝撃だった。このような人間の力ではどうにもならない自然の力、宇宙物理の摂理、原理原則に触れて(偶然かもしれないが?)、僕はなにかとても清々しい気分に浸るのだった。

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(左から)ナニュキの村の赤道の看板に立って万歳! 足元にはこんなバケツと漏斗が、、、。やって見ると、中の水は果たして。

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探検家リビングストーン所縁の美しいビクトリアフォール。

圧倒的な自然の力と言えば、その後に訪れたザンビアのビクトリアフォール。高さ110m、幅1600mに渡って落下する、さながら地球に掛けられた巨大な水の"カーテン"にはただ呆然と見とれるばかり。そして、さらにはナミビアの究極「フィッシュ・リバーキャニオン」の圧巻(深さ550m、幅27km、長さ160km )。正に地球に掘られた地上の「溝」である。飛んで南アメリカ大陸。究極の美しさはアルゼンチンの「パタゴニア」の山々か「ペリトモレノ」の大氷河だろう。どちらもかつては地球を覆っていた氷河の残像だ。氷の世界には一種独特の不思議な魅力というものがある。およそ人間の感情など介入の余地もない冷酷さと厳粛、美しさと神秘。そう、私にとっては生涯忘れることの出来ない「南極点」から眺めた北の景色(極点からは全部が北の方向となる)には、しみじみと旅の究極を見る思いがした。
「感動」・・・それは冒険の果てに得られる宝物。つくづくとバイクは多くの感動を我々にもたらしてくれる乗り物だと思うばかりだ。

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アフリカの溝とも言っていいフィッシュ・リバー・キャニオンの圧巻風景。

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(左)美しいパタゴニアの山々は氷河の造形美だ。(右)ペリトモレノの氷河を見ながら笑顔でおやつを食べる筆者(2010年初夏)。

謹告
10月23日、マレーシアGP・MotoGPクラスで亡くなったマルコ・シモンチェリ選手の冥福を心よりお祈り申し上げます。

冒険家 風間深志:写真

プロフィール 数々の冒険の傍ら、バイクツーリングクラブ「MAC」のリーダーや、椎名誠氏率いる「いやはや隊」メンバーとして、さらにフィッシングクラブ「FAC」の会長、全国各地での講演や「地球元気村」の開催など、多方面で活動。2008年 WHO承認活動「運動器の10年」世界運動国際親善大使に就任。
*NPO法人「地球元気村」代表
http://www.chikyu-genkimura.com/