I'm from Japan

I'm from Japan 「もしも、MCダイアリーのチェ・ゲバラがいたら…?」

この記事は、2012年11月以前のY'S GEAR CLUBの記事です。

I'm from Japan:写真

「地球に遊ぶ」 COLUMN5第1回

I'm from Japan
「もしも、MCダイアリーのチェ・ゲバラが居たら…?」

Ernesto Rafael Guevara de la Sera=通称「チェ・ゲバラ」(1928~1967)という人のことを知っているだろうか?
アルゼンチンの裕福な家庭に生まれ、キューバをフィデル・カストロとラウル・カストロと共に、ゲリラの活動によって解放に導いた革命家。我々モーターサイクル・ファンにとっては、あのオンボロのノートン(500cc単)でラテン・アメリカを旅した映画「モーターサイクル・ダイアリー」の実際の主人公である。混迷するキューバをたったの82人のゲリラによって救った英雄。医師であり勇敢な革命の戦士。
そのゲバラが実際に住んでいた家と、氏の最愛なる娘さんのアレイダさんを訪ねたのは去年のちょうど今頃(6月30日・北南米縦断中)だった。

2010年6月30日 晴れ
自宅はキューバの首都ハバナの中心部、革命広場に近い閑静な住宅街の中。鉄格子の白壁に囲まれた赤い屋根の家。あの偉大なるヒーローが40年前に住んでいた家である。今にも、あのゲバラ氏が葉巻をくわえて出てきそうな雰囲気、ドキドキと高鳴る気分を押さえ切れない私だった。
「こんにちは、遠い国からよくいらして下さいましたね」と、笑顔で出迎えてくれたゲバラの愛娘のアレイダさん(49歳)。握手を交わし、さっそく家の中のソファーに通された。こちらの緊張した気分とは裏腹に、アレイダさんのゆったりとした気分と笑顔に救われ、こちらもリラックスした気分になれた。

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(左)チェ・ゲバラ※キューバの小中学校では今も朝礼で「セレーモス、チェ!」=「ゲバラのように社会に貢献し、勇敢で偉大な人になる!」と生徒に言わせている。(中)ゲバラの愛娘のアレイダさん(小児科医師)。 (右)40年前のそのままの佇まいのゲバラの家。

「日本からね?」と始まったインタビューだったが、きっと世界中からやってくるジャーナリストから、いつもこうしてゲバラの話ばかりを聞かれ、内心は辟易とした気分ではないだろうか?と思い、「いつも、お父様の話ばかりで嫌ではないですか?」と尋ねると、意外にも「いいえ、いいえ、自分の大好きな父の話なのですから、いくら聞かれても嬉しいですよ」の返事。
「小児科の医師になった理由はお父様の影響?」と聞くと、「とっかかりはそうでしたが、医療は国家の大切な取り組みですから、一生懸命励んで社会に貢献したいと思っています」とのこと。
(中略)___国家予算の35%を医療費に充て、世界一の充実した医療大国を築いたキューバの医療事情について、沢山の話を聞くことが出来た。

「ところで、お父様に関して覚えていることは?」と尋ねてみると、「父は海外への出張ばかりで、家での遊び相手はいつも弟のカミーロばかり、家での記憶は数少ないけれど、このソファーのここに座って写真を撮ったり、あの階段のところで写真を撮ったり、優しい父の笑顔をいっぱい記憶しているわ。若い頃は貴方のようにバイクに乗って旅をして…」と、遠くを見つめたアレイダさん。顔をこちらに向け直し「で、貴方はこれから何処へ行くの?」と切り替えされた。
「お父様と同じアルゼンチンを出発して、南米を北上、これから北米・カナダ、そしてスカンジナビアに渡りスエーデンまで行きます」
すると、しきりに「無謀な行為は絶対にダメですよ!」と何度も繰り返し忠告をしてくれた(きっと、ボリビアの革命で不帰の人となった父ゲバラへの想いが、そう言わせたのだろう)。これまで、日本には過去二回にわたり来日したアレイダさん、お気に入りは沖縄と沖永良部島らしい、次回は日本での再会を約束し別れた。目元がとてもお父さんに似た優しい人だった。

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(左)ゲバラが実際に乗っていたシボレー・インパラ(1967年製)は今も大事に保管されている。(右)現在でも1950年代のアメ車が街中をいっぱい走っているハバナ市街。

「I'm from Japan!」___海外を旅すると、何処に行っても先ずは「自分が日本人」であることの挨拶からはじまる。そういった意味からすれば、国内より外国に居た方が日本人ははるかに日本人であることを自覚し、自国を愛する気持も高まるというもの。今回の東日本の地震・津波の大震災、そして福島の原発事故の惨事をきっかけに国民の思うところは多大だ。あまりにも遅過ぎる国家的対処と混迷を極める政局や経済不振に、改めて「日本の行方」を案ずる。考えるに、国歌・国旗に揉める先進国が世界の一体何処にあろうか?___こんな時にもしも、あのチェ・ゲバラが日本にいてくれたら?と、思うことしきりだ。

冒険家 風間深志:写真

プロフィール 数々の冒険の傍ら、バイクツーリングクラブ「MAC」のリーダーや、椎名誠氏率いる「いやはや隊」メンバーとして、さらにフィッシングクラブ「FAC」の会長、全国各地での講演や「地球元気村」の開催など、多方面で活動。2008年 WHO承認活動「運動器の10年」世界運動国際親善大使に就任。
*NPO法人「地球元気村」代表
http://www.chikyu-genkimura.com/