「がれきの学校」に集まった未来の大人たち。

都会に住む子供たちを連れ、被災地のがれきを踏んだ。

この記事は、2012年11月以前のY'S GEAR CLUBの記事です。

「がれきの学校」に集まった未来の大人たち。:写真

「地球に遊ぶ」 COLUMN6第1回

「がれきの学校」に集まった未来の大人たち。

あの大震災の起きた3月11日。そこから三週間を経た4月3日の現地への調査以降7月10日の撤退まで、足かけ四ヶ月におよぶ地球元気村(注1)とライド・ツー・セイブ・ジャパン・コミュニティー(注2)の現地でのボランティア活動を基盤に、今度は都会に住む子供たちを連れ「現場に学ぶ」をテーマに被災地のがれきを踏んだ。名付けて―――「未来へつなぐ がれきの学校」。 あれから二ヶ月、刻一刻と変化する被災地の状況は一体どんなだろうか? 秋めく空の下、海を望む沿岸部のあちこちにボタ山のごとく大きく積み上げられた"がれきの山"。しかしながら、未だそのがれきは行き場所もなく、一種異様な赤茶けた姿が空しく横たわるだけ…。嬉しかったのは、これまでの殺伐とした"がれき野原"に、逞しい雑草の緑が大地を覆って風景に穏やかさと潤いが戻ったことだ。ただし、依然として"がれき野原"に人影はない。 2011年8月19日、東京/新宿駅22時30分発。沖縄、長野、栃木、東京など、全国から集まってくれた子供と保護者たち63人。旅程はバスの車中一泊、ホテルに一泊。実際に、自分の目で被災の現場を確かめ、感じ、学ぶことが主たる目的。がれき野原に花の種を植え、がれきの撤去をし、地元の子供たちと交流をして過ごす三日間だ。

注1)地球元気村は1988年から活動を開始。地域の自然を生かした地域づくりと、人々の育成によって「自然」と「人」のより良い調和社会を目指すNPO活動。超有名人が特別講師として名前を連ね、風間深志が村長を務める。

注2)モトクロス全日本チャンプ、トライアル世界ランカー、FMXライダーなどが名前を連ねる被災地支援コミュニティー。実際にかなりの長い時間を被災地のボランティアに多くのライダーが来てくれた。

写真

(左)ひまわりの咲く南三陸町「防災対策庁舎」にお参りした。(中)大きな北上川をバックに長塩谷(石巻市)の被災地で、一列に並んで花の種を植える子供たち。 (右)がれき野原を目の当たりにし、「これからこれをどうするのだろう・・・?」と、参加した子どもたち。真ん中がエド君。

バスから現地に降り立った子どもたち。本物の被災現場(志津川)を目の当たりにして、皆一様に言葉がなかった。遠くを見たまま、ただ呆然とする子、足下の地面の泥で埋まった子供の衣類や靴、ノートを見つけて涙する子。誰もが普段の家のテレビや新聞で触れるものとは違う"生"の現場が訴える凄さ、痛ましさを体で実感するのだった。 現場の力とは、ただ単に「驚き」や「凄さ」を目の当たりにするだけではなく、一体この惨状をどうしたらいいのか?―――と、自らの心にわき出る主体的な「疑問」や「問題意識」と対面するところにある。今、国民も政治家も、こぞって全ての人々が"がれき"の現場に直に来て、現状を把握し、現場(国家)の行く末について考えるべきだと思う。なぜならば、今回の震災でいみじくも抱えることになってしまった問題の範囲は、被災地という領域を越え、我々が今日ここまで生きてきたライフ・スタイル(生き方)の全般について、根底から考え直さなければならない本質が付随しているからである。そして、特に将来を担う子供たちには今回の震災の現状を、目に、心に、焼き付けて、未来の社会をより良い方向に導いて行ってもらいたいものである。

写真

南三陸の子どもたちとゲームを通して交流会を行った。

午後は、石巻市北上町長塩谷地区(28軒の全部が壊滅した)の被災現場で、震災時に住民たちが避難した経路をたどって高台に登り、眼下の海と川との境界線が急激に変わってしまった北上川をながめ、この地で復興に一人奮闘する佐々木力氏(41才)の夢見る"被災地全体を「お花畑」にして、みんなが戻って来るのを待つ"という魅力的な大プロジェクトのお手伝い。 がれきを集め、石を拾い、整地した畑に花を植える。この瞬間、以前にはただ単に「被災地」だった場所が、花の命で繋ぐ愛着のある思い入れの地へと変身する。埼玉県上尾市から参加した川上エドオジョン智慧君(13才)は――「正直、来る前は『被災地?』もういいよ、うんざりだよ。」と思っていた。ところが、現場の地を踏み、土に触れて「自分にも他に何か出来る事はないだろうか?何か人の役に立ちたい!」と、心の内面に強い変化を感じた様子が印象的だった。

写真

第2回「がれきの学校」参加者全員集合(「南三陸ホテル観洋」正面玄関にて)

冒険家 風間深志:写真

プロフィール 数々の冒険の傍ら、バイクツーリングクラブ「MAC」のリーダーや、椎名誠氏率いる「いやはや隊」メンバーとして、さらにフィッシングクラブ「FAC」の会長、全国各地での講演や「地球元気村」の開催など、多方面で活動。2008年 WHO承認活動「運動器の10年」世界運動国際親善大使に就任。
*NPO法人「地球元気村」代表
http://www.chikyu-genkimura.com/